宮部みゆきは大好きな作家の一人だ。
1992年の『火車』
(山本周五郎賞)に
感動して以来、
ほぼ全ての
宮部みゆき作品を読んでいる。
特に社会派作品の『理由』(直木賞受賞)、
『模倣犯』には、心を揺さぶられた。
作者と私が同世代ということもあって、
作者の描く小説の時代背景にも
共感できるからなおさらだ。
その宮部みゆきが、
久しぶりに社会派ミステリーを出した。
『ソロモンの偽証』。
全三部作。各巻700ページ、
合計2200ページを越す大作だ。
読み始めたらイッキに
のめり込んで読了してしまう
これまでの宮部みゆき作品と違って
いささか面喰らう。
「忙中閑あり」と自分に言い聞かせ、
睡眠時間を減らして読み始めるが、
なかなか先に進まない。
「構想15年、連載9年、
作家生活25年の集大成」という。
熟読した。
『ソロモンの偽証』は、
中学3年の男の子が校舎から
飛び降りるところから始まる。
「いじめ」の話がつらすぎて、
本を開くのに勇気が必要だった。
向き合いたくない思いが、
読むスピードを鈍らせた。
2ヶ月もかかってしまった。
この2000ページにもわたる
大作の中に「宮部みゆき」が込めた核心。
「人間とは何か。
かくも弱い者なのか。
弱き者なのに、
かくも前を向いて
生きていかなければ
ならないものなのか。」
宮部みゆきは「祈り」ながら
書いたに違いない。
後半の第3部は唸るばかり。
さすがは日本が誇るストーリーテラー。
登場人物のひとりひとりの
心のひだまであざやかに描き出す。
涙が滂沱と止まらなかった。
有名な故事、
「ソロモン王の裁き」をモチーフにしたこの本。
私にとって間違いのない昨年のベストワン。
この本を読まずして宮部みゆきは語れない。
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