2013年5月某日。
菊美人の蔵にて。
村上春樹の新作を
読んでみる気になった。
『色彩を持たない多崎つくると
彼の巡礼の年』。
村上の前作、『1Q84』は、
残念なことにBOOK1で興味を失ってしまった。
今回は本が薄かったこと(笑)と、
25才の時に読んだ『ノルウエイの森』の
感激を忘れていなかったから。
久しぶりの現代純文学。
読み始めからすぐに、
物語の中に引き込まれていく。
思考が深く深く、
本の中に入っていくのがわかった。
読んでいる最中に
家内から呼びかけられても、
現実の世界に戻るのに、
ちょっと時間がかかってしまうような感覚。
『駅からマンションまで一人で歩いて帰るあいだ、
つくるはずっととりとめのない思いに囚われていた。
時間の流れがどこかで左右に枝分かれして
しまったような奇妙な感覚があった。
彼はシロのことを考え、灰田のことを考え、
沙羅のことを考えた。
過去と現在が、そして記憶と感情が、
並行して等価に流れていた。』(P228)
この本には書評など必要ないのだろう。
読む人で共感するところが違うだろうし、
同じ人でも、その人のおかれた立場が変わると
感じるところが違ってくる。そんな本だ。
いずれにせよ、
久しぶりに余韻の残る本だった。
まだ5月だが私にとっての
今年のベスト本であることは間違いなしだ。
読んでいない方、本屋へ急げ!