先日、柳川市、沖の端の
北原白秋生家に
出かけました。
白秋の「思い出」が、
父が注釈の印を付けたり
書き込みしたりして、
余りにも汚れたため、
新しい本を買い求めるのが
今回の目的。
「思ひ出」は、
北原白秋の
日本の文壇での名声を
一躍、高めた詩集。
1885年(明治18年)に、
北原白秋は、柳川の
造り酒屋の長男として誕生。
筑後有数の豪商の
トンカジョン(長男)。
1901年、16才、柳川の元藩校、
伝習館高校の学生のとき、
柳川の大火で酒蔵が類焼。
これより、北原一族の
没落と栄光が始まります。
1904年、19才。
伝習館の頃より、白秋の詩歌は
文壇で絶賛。親に無断で退学。
上京。早稲田大学に入学。
翌年は、「早稲田学報」の
懸賞一等に入選。
北原白秋は、
「キラ星」のごとく
日本の文壇に登場します。
トンカジョン、チンカジョン、
ゴンシャンなど、長崎の舶来言葉や、
柳川弁のオノマトペを駆使する
白秋の詩は、当時の文壇を席捲します。
そして、「思ひ出」。
この「思ひ出」は、
故郷「柳川」と
自分の出生である
「造り酒屋」への
懐旧の情が
高く評価された作品。
なんと、白秋、
弱冠26才のときの作品。
「思い出」の中は、
酒の歌であふれています。
今そこで見たような
酒造りの情景を
白秋は歌い上げます。
遠く離れた東京で、
思慕の情、熱く
白秋は書いたに
ちがいありません。
この「酒の精」は、
神秘的な蔵の中を、
魔物に喩えて、
二才年下の弟、鉄雄に
諭しているもの。
情景が浮かんできます。
翌年の1912年、27才の時、
柳川の造り酒屋は再興ならず、
菊美人に嫁に来た姉、
加代だけを残して北原一族は
白秋を頼り、上京します。